39歳まで現役CAとしてお仕事をされていた千土深香(せんど・みか)さん。

華やかな世界にいた自分が、肩書きを失って輝きを失ってしまった。

40歳を過ぎたときに、「ただのおばさん」として「人生の消化試合」をしている自分にふと気づいた瞬間があったといいます。

「20代の頃は、35歳を過ぎたらCAとして働くことはもうできないな、と考えたこともあります」

「あっちの若い子に接客されたいな~、なんて思われてしまう自分の未来はイヤでした」

「きっとあの頃は、見た目や若さだけに価値を置いていたんだと思います」

そんな深香さんは現在、「ウォーキング指導」と「マインドワーク®」を掛け合わせたオリジナルプログラム、「印象beアップレッスン」を伝える講師として活動しています。

40代は女性にとって大きな、ひとつの分岐点。

ただ食べて、寝て、起きて、パートして、という人生を送ることに疑問を持っている方へのヒントを伺ってきました。

「私ごときが…」という強い劣等感

千土深香(せんど・みか)。日本航空でCAとして約20年勤務。国内外を問わず、多くのお客様と接する中、コミュニケーションやマナー、立ち居振る舞いのスキルを磨いてきた。NPO法人日本ウォーキングセラピー協会認定講師。一般社団法人日本マインドワーク®協会認定マインドワークフォーカライザー。

── ただのパート主婦では終わりたくない、という強い想いがあったというお話でした。

深香:かつてCAという、世間からは華やかに見られることも多い仕事をしていたからこそ、退職後には複雑な想いがありました。

ただのパート主婦で終わりたくないというか、肩書きをもって自分自身を輝かせたかったんです。なので「自分にできることは何だろう?」と模索しながら退職後の人生を歩いてきたように思えます。

── これまでとは違う、新しい「何か」を見つけることは大変だったのでしょうか。

深香:私に限っていえば、学ぶことや資格を取るという「インプット」はすぐに始められました。それよりも「アウトプット」の方がはるかに大変でした。

学んだ知識や手に入れた資格を活かして「お仕事にする」ということに抵抗があったんです。

「私ごときが人様に何かを教えていいんだろうか…?」って。

講師としての一歩を踏み出すまでにはかなりの時間を使ってきたように思います。

── どのようにその第一歩を踏み出したのでしょうか?

深香:ロコルという、千葉県北総エリアで無料配布されているフリーマガジンがあるのですが、そこにおててカルチャーという個人の方が主宰されているカルチャースクールの案内があったんです。

そこへ応募するのもすごく勇気がいったんですけれど、ピンとくるものがありました。そこで勇気を出して行動しなければもう後がないって、その時はなぜか思ったんですよね。

なので、もう自分で自分のお尻を叩いて一歩目を踏み出したという感じです(笑)

妄想だったことが現実になった

インタビューをとても楽しそうに受ける姿が印象的でした

── 一歩を踏み出してから、深香さんはどのように変わられたのでしょうか。

深香:まだまだ試行錯誤してますが、ただ流されていただけの毎日からは大きく変わり、「人生を自分で作っている」という感覚があります。

営業活動の一環としてSNSやブログの発信をして、少しずつですがお客様に来ていただけるようになり、リピーターとして通ってくださる方も増えてきました。

最近でいうと、妄想レベルで思っていた「CAを目指している女子大生向けのウォーキングレッスン」の研修講師依頼などもいただけるようになりました。

── 深香さんのレッスンにはどのような特徴があるのでしょうか?

深香:元CAだったということが付加価値になっている部分はあると思います。

CAという、華やかにみられることも多い職業だからこその振る舞い方はあると思います。モノを人に渡すときのしぐさ、服を着るときのしぐさ、写真を撮られるときの立ち方、バッグの持ち方…。

その一つひとつに「元CAとしての」という付加価値が、お客様の頭の中で勝手に加えられているかもしれませんね(笑)。

ただ私自身は、あまり器用ではない自分だったからこそ伝えられる教え方であったり、自分の未来を見失ってからもう一度立ち上がった経験から話せることがあると思っています。

私の伝えている「印象beアップレッスン」というのは、見た目や外見だけではなく、人生そのものに働きかけるものだからです。

それは「マインドワーク®」を取り入れようと考えるキッカケでもありました。

外見を装うことだけの限界

── ウォーキング指導のほかに、心の筋肉トレーニングをする「マインドワーク®」も伝えていこうと思った経緯は何だったのでしょうか。

深香:人ってどうしても「外科手術」とか「整形手術」みたいに、すぐに変われるものに期待する傾向ってありませんか?

そのうちのひとつとして、ファッションやメイクのような外見を変える手段があると思うんです。私の教えるウォーキングや姿勢の指導もそこに入ると思います。

ただ、そこに対して私なりに思うことがあります。それが「40代からの分岐点」です。

── 40代からの分岐点とは何でしょうか。

深香:これも昔、CA時代に思っていたことなんですが、「あの人も若い頃は可愛かったんだろうな~」と失礼ながら思ってしまうことがありました。

CAという制服をまとっていても、40代を過ぎてくるとそれまでの「生き方」の姿勢によって、人それぞれ「美しさ」が変わってくることを目の当たりにしたんです。

見た目や若さばかりに気を取られて自分を磨いてこなかった人は、40代になってからよほど意識を向けないと「昔はキレイだったんだろうな…」という見られ方をしてしまうような気がするんです。

深香:そうではなく、40代、50代と年を重ねても美しくみられる方が、私はいいんじゃないかと思っているんです。

人は見た目が9割じゃないですけれど、最初はどうしても外見で判断されますよね。そのとき、もう40代以降は見た目だけを変えてもダメで、内面がどうしてもにじみ出ちゃうんですよね。

キレイな服、ステキなメイクをしても、土台ができていないとまったく活かされない。それが「40代の分岐点」です。

── 深香さんは「マインドワーク®」を通して、その問題にどうアプローチしているのですか?

深香:「マインドワーク®」には3つの特徴があります。

  1. 潜在意識・心のしくみが学べる
  2. 視点が変わることで行動が変わる
  3. 他者への理解が深まり、コミュニケーション力が上がる

これはまさに「これまでの私」がそうで。

「ただのおばさん」として「人生の消化試合」をしているだけの生き方だったのが、40代というタイミングでしっかりと心と身体のクセに気づいて、不要なマインドは手放し、新しい自分を作り上げていく。

そんなアプローチができる内容になっています。

もう年だし、今さら何かするには遅いでしょ? って考えている人も多いと思います。特に昭和のお母さんたちは生きることに必死で、子育てとか、見ているものがとにかく至近距離にならざるを得なかった世代。

「私」ではなく、「お母さん」とか「奥さん」という生き方をしてきました。

やってくるボールを受けたり避けたりする人生だった。その歯車を「逆回転」させることが、「マインドワーク®」で目指すところです。

女性には複数の「肩書き」があります。妻としての顔、母としての顔、社会人としての顔…。

そんな中で、なかなか「自分だけ」のために生きるのって難しいんですよね。

でもだからこそ、「望む自分を再設定」するための時間をもって欲しい。これが私の願いです。

自分を支えてくれたコミュニティ

深香:まだまだ私も、こうして個人での講師活動を始めたのは最近のできごとです。ですがそれでも大変なこと、うまくいかないことはたくさんあります。

そのときに心の支えとなったのは「コミュニティ」の存在だったのかなと思います。

例えばジャニーズの「嵐」というグループがありますけれど、メンバーのみんなそれぞれがピンで活躍するけれど、「嵐」という帰る場所があるから心強くいられるような。そういう存在が私にとってのコミュニティです。

どこかに所属しているという安心感があるから、傷ついても帰ってこられるし、また羽ばたくこともできる。

それに、一緒に過ごした人たちとの特別な間柄というのはとても貴重です。なによりも楽しい(笑)。

今はちょっと勇気を出せばいろいろなコミュニティがたくさんあります。私も「人生ってこんなもんじゃ終わらない、人生って変わるんだよ!」ってこれからも伝えていきたいと思っています。

自己肯定感が低かった私でも変われたので、みなさんにもぜひ、望むのであれば、一歩を踏み出していただきたいなって思います。